慰謝料の額は、弁護士の交渉次第で変わります
慰謝料の性質とは、どういうものなのでしょうか
一般的にも用いられる「慰謝料」という言葉ですが、離婚の場合に限って言うと「(離婚に絡む)精神的苦痛に対する損害賠償金」を意味します。
この精神的苦痛には、二つの種類があります。すなわち、離婚原因となる浮気や不倫、家庭内暴力といったものから受けた精神的苦痛と、それらによって離婚に追い込まれたことによる精神的苦痛です。
なお、この場合、慰謝料の根拠条文となるのは民法の709条(不法行為による損害賠償)ですが、この規定の成立には相手方の「違法行為」が必要です。よって、浮気や不倫、家庭内暴力行為を原因とする離婚の場合には慰謝料が認められる可能性が高いですが、単なる性格の不一致などを理由とする離婚の場合には、慰謝料の請求はできません。
慰謝料が請求できる場合、できない場合
慰謝料が請求できるケース
- 賭博や浪費行為が著しく、家庭を崩壊させた場合
- 生活費を渡さないなど、経済的遺棄状態にある場合
- 浮気や不倫などの不貞行為により精神的な苦痛を与えた場合
- 家庭内暴力などによって精神や身体に苦痛を与えた場合
慰謝料が請求できないケース
- そもそも相手側に離婚原因が存しない場合
- 離婚原因が夫婦のどちらにも等しいレベルで存在する場合
- 性格の不一致などのように、理由に違法性がない場合
具体的事情によって変わる慰謝料相場
婚姻生活の具体的事情というのはその夫婦によって様々なので、認められる慰謝料の額も個別的に決まります。とはいえ、離婚の原因にも類似のケースはありますので、複数の裁判例を紐解くことで慰謝料の額を決定付けるいろいろな要素を知ることは可能です。慰謝料の相場としてある程度一般化できる額としては、以下をご参照ください。
慰謝料の額を左右する要素について
- 離婚を求める当事者の年齢や性別、収入
- 当事者が離婚によって受ける経済的影響
- 結婚期間の長短、及び同居期間の長短
- 子供の有無や数、年齢
- 離婚原因となった違法行為の数や性質
- 不貞行為や家庭内暴力の有無、程度、頻度
不貞行為などによる精神的苦痛のケース
浮気・不倫が原因での離婚の場合、慰謝料額は100~300万円が相場です。不貞行為のきっかけや期間、回数といった行為そのものの性質と、それによって配偶者が受けた肉体面や精神面における苦痛(心を病んだり、流産などの原因となったり)とを個別に考慮して金額は上下します。
家庭内暴力などによる精神的・肉体的な苦痛のケース
家庭内暴力行為を原因とする離婚の場合、慰謝料額は50~300万円が相場です。精神的・肉体的な暴力の程度や頻度、それによる傷害や後遺症の有無や程度によって金額が上下します。暴力の程度が甚だしい場合、何度も行われた場合、怪我によって重い障害を負った場合には、慰謝料額も上がります。
経済的な遺棄により困窮を招いたケース
夫婦には扶助義務がありますので、生活を送る上で必要なお金を渡さなければ、経済的遺棄となります。それを原因とする離婚の場合、慰謝料額は50~300万円が相場です。なぜ相互扶助を拒否するか、その理由を検討して慰謝料の額を決めます。
夫婦間の性交渉を正当な理由なく拒否するケース
セックスレスを原因とする離婚の場合、慰謝料額は100~300万円が相場です。単に性交渉をしなくなったというのに止まらず、不倫をしていた上に不倫相手とは性交渉があったという場合には、不倫をしていた側の配偶者の責任が重くなるので、離婚の際の慰謝料額も上がります。
慰謝料の請求方法
慰謝料の請求に当たっては、まず相手との交渉を行います。その上で、相手が交渉に応じようとしなかったり、交渉が決裂して話がまとまらなくなったりした場合には、裁判によって請求することとなります。
直接的な交渉による慰謝料の請求
直接交渉の方法としては、「書面での請求」と「口頭での請求」とがあります。それぞれの方法にメリットとデメリットがあるので、以下を参照してください。
書面での請求について
メリット
- 内容証明郵便による威嚇的効果
- 主張が書面化されていることにより、行き違いが少なくなる
- 書かれたことをじっくり読んだ上での応答ができる
デメリット
- やり取りに時間が掛かる
- 相手にもじっくりと考える時間を与えてしまう
口頭での請求について
メリット
- やり取りに時間が掛からず、即応性がある
- その場で相手と直接やり取りをするため、相手の反応を逐一うかがうことができ、また小細工の時間を与えずに済む
デメリット
- 相手の交渉力や知識量によっては、こちらが言い負かされたり譲歩を余儀なくされたりしかねない
- 合意内容が証拠として残らないため、後からの立証が困難
このように「書面での請求」と「口頭での請求」にはそれぞれメリットとデメリットがありますので、個別の状況ごとにベストな方法を選ぶといいでしょう。ただ、どちらを選ぶにしても、交渉を有利に進めるには経験豊富な弁護士のサポートが必要となりますので、お気軽にご相談頂ければ幸いです。
裁判中における慰謝料の請求
裁判離婚の手続きをする際には、家庭裁判所へ提出する訴状に、支払いを希望する慰謝料額と、その根拠である離婚原因を記載します。離婚原因によっては相手方がその存在を認めないことも往々にしてありますので、たとえば不貞行為や家庭内暴力行為があったことを裁判官に示すための証拠も用意しておかねばなりません。
裁判の開始後は、訴状に基づいた原告側の主張と相手方の反論、それへの再反論といった流れを順番に積み重ねていきます。場合によっては当事者尋問手続きによって裁判官が直接両当事者に意見を聞いてくることもあり、裁判所に浮気相手が出頭してくる可能性もあります。
また、裁判官が和解案を提示してきた場合には、両当事者がそれに合意して和解勧告を受け入れると、訴訟はその時点で終了します。このときには和解による離婚が成立します。和解の提案や和解案への合意がなされなかった場合はそのまま審理が進行し、最終的に慰謝料請求の可否や金額をも含めた「判決」が出されます。
裁判手続きは専門的であり、考慮しなければならないことも多く、時間や気力を消費します。負担の軽減を図りながら望ましい判決を得るためにも、弁護士のサポートを受けるのをお忘れなく。
当事務所では慰謝料の請求もお助け致します
プロフェッショナルとしての弁護士が、離婚交渉をお助けします
離婚手続きの専門家としては、弁護士の他にも行政書士がいます。ただし、行政書士は協議離婚成立時に離婚協議書を作成したり慰謝料の請求関連の業務を執り行ったりといったことはできますが、当事者同士の争いの仲裁や交渉、訴訟への関与やサポートはできません。
というのは、法律上、こうした場合に訴訟代理人となれるのは弁護士だけだからです。したがって、慰謝料に関する書類を行政書士に安価で作成してもらったとしても、相手方との交渉をするのが自分自身であったら、やはり時間や気力の負担は大きくなるでしょう。
加えて、交渉を有利に運ぶのも難しいかも知れません。そこで、離婚手続きにおける全ての局面で関与することができる弁護士にご相談頂ければ、初期の交渉から最終的な裁判まで、全面的にサポートを致します。もちろん依頼者の負担は軽減されますし、交渉をスムーズに進めることで、結果的に金銭的損失が少なくもなり得ます。
離婚問題はデリケートで扱いが難しいものだからこそ、プロフェッショナルとしての弁護士をご活用ください。