理由を問題にせず離婚が成立する「協議離婚」
離婚には協議、調停、審判、裁判によるものがそれぞれありますが、基本は夫婦双方の合意で成立する協議離婚です。合意があれば足りるので、理由の如何を問いません。
要するのは離婚届への二人の署名捺印と2名の証人による記載のみ。あとは役所が受理してくれます。夫婦間の協議ができない場合や合意が得られなかった場合には、裁判所での交渉が行われます。
裁判の前に、まずは調停委員と裁判官が仲介者として入る調停手続きからです。
裁判離婚に必要なのは、法で定められた離婚原因です
協議離婚ができなかった場合、裁判所に調停を申立て、専門の第三者である調停委員を通じた協議での離婚を目指しますが、提示された調停案への合意が得られなかった場合は、裁判の申立てを行うこととなります。
裁判上の離婚の成立に必要なのは、法定の離婚原因です。この離婚原因には幾つかの種類があり、適切な証拠が提示されて裁判官が納得すれば離婚を認める判決が出されます。
判決の強制的効力により、相手方は離婚を拒否できません。法廷離婚原因について、以下でご説明します。
5種類の法定離婚原因(民法770条)
- 浮気や不倫のうち肉体関係を伴う「不貞行為」
- 生活費を渡さず放置するといった「悪意の遺棄」
- 行方や生死の不明状態の3年以上の継続
- 強度の精神上の病にかかり回復の見込みがない場合
- その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合
不貞行為があった場合
浮気や不倫を「不貞行為」といいますが、法定離婚原因として認められるのは、自由意思に基づく肉体関係がある場合です。不貞行為に基づく離婚や慰謝料の請求は、性的交渉の存在の立証が必要となります。
具体的には、不貞行為の相手とホテルに出入りする写真などですが、録音テープやメールの記録も場合によっては証拠となり得ます。ただ、それだけでは証拠としてやや弱いと考えられます。
不貞行為を何としても立証したければ、探偵事務所への浮気調査の依頼という手段もあります。
悪意の遺棄がなされた場合
配偶者に生活費を全く渡さずに放置しておいたり、配偶者の帰宅を妨害したりといった行為が「悪意の遺棄」に当たります。自分の方から家を出ての別居や、仕送りを約束しておきながら送金をしない、そもそも仕事をしないといった場合にも悪意の遺棄となります。
こうした行為により精神的苦痛を受けたと認定されたときは、離婚原因として認められます。
行方不明・生死不明が3年以上続いた場合
配偶者の長期にわたる行方不明や生死不明状態というのは、とても心配で不安になるものです。事故や怪我、急病、事件に巻き込まれた、自らの意思で蒸発した、あるいは駆け落ちした……などなど、いろいろと可能性は考えられます。しかしこの場合、理由は問題とならず3年以上行方も生死も不明な状態が続いたならば、離婚原因となります。
なお、離婚の申立てには警察に捜索願を出していることを証明する「捜索願受理証明」の提出の必要があります。
強度の精神上の病にかかり回復が見込めない場合
夫婦は互いに助け合い、協力し合って生活していかなければならないものです。これを相互扶助義務といい、民法上にも規定があります。そうだとすると、夫婦の一方が病気になった場合にも、やはりお互いに助け合うのが原則です。しかし、病気の種類が統合失調症や躁鬱病などのような重い精神病だったり認知症だったりする場合、支え続ける配偶者の心身も蝕まれていくということがあります。
このため、被害の拡大を防ぐためにもやむを得ず離婚原因として認められているのです。要件は強度の精神病であることと回復の見込みがないことですが、②んげいは難しく、直ちに離婚ができるわけではありません。また、「成年後見人」の申立てを先にしておかなければならないこともあります。
その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある場合
以上のように、離婚が認められる理由は多種多様ですが、全ての理由を網羅してあるわけではありません。そこで法律も、その他として補完する規定を置いてあるのです。実際の離婚自由の判断は個別に行うので、そのケースごとの立証の仕方などにより、離婚が認められるかどうかは変わり得ます。また、裁判官の心証も判決に大きな影響を及ぼします。